2007-08-31から1日間の記事一覧

四十二/ 木造校舎 その五(56/100)

こういうこともあった。ある日、休み時間があと一分間くらいになった時にTさんは教室に戻ってきた。教室の引き戸の位置からは廊下にある流しが見える。その時、Tさんの学級のAという児童がそこで水を飲んでいるのが見えた。Aは坊主頭の子供で、他の子と…

四十一/ 木造校舎 その四(55/100)

また、こんなこともあったという。授業中、教室のすぐ外の廊下を歩く音がする。前述のように、この校舎の床板は誰かが歩くとギシギシ音を立てる。平素から校長先生や用務員さんなどが授業中も廊下を通り過ぎていくことはあったので、それだけなら別段気にも…

四十/ 木造校舎 その三(54/100)

夏休みが明けてから少しして、研究授業があった。Tさんも、自分の学級の授業を教育委員会の役員や近隣の学校から来た教員に見せることがあった。その時、授業中の光景を後のレポートの資料として使いたかったので、偶々手が空いていた教頭先生に依頼して何…

三十九/ 木造校舎 その二(53/100)

その少し後。 Tさんが掲示物を作るため、担任する教室で夜遅くまで作業していた時のことである。やっと出来上がった時はすっかり夜も更け、同僚もみな退勤していた。 (すっかり遅くなってしまったな) そう思って窓の外をぼんやり眺めていたが、どうも落ち…

三十八/ 木造校舎 その一(52/100)

Tさんが十五年前に教師として初めて赴任した小学校の校舎は、当時既に築五十年近い木造校舎だった。窓や戸は枠が歪んで開け閉めすると大きな音が鳴る。外壁に至っては何箇所も朽ちている始末。歩くとギシギシ鳴る床は板が歪んで隙間が目立つだけでなく、子…

一度に五話は書きすぎと思ったんですがTさんから聞いた話が大層面白かったので仕方ないですよね。http://d.hatena.ne.jp/wonder88/00010101