三十九/ 木造校舎 その二(53/100)

その少し後。
Tさんが掲示物を作るため、担任する教室で夜遅くまで作業していた時のことである。
やっと出来上がった時はすっかり夜も更け、同僚もみな退勤していた。
(すっかり遅くなってしまったな)
そう思って窓の外をぼんやり眺めていたが、どうも落ち着かない。
なぜだろうか、と思って数分間窓を見ていたTさんはやっと異変に気付いた。
窓ガラスに自分の姿が全く映っていないのだ。
Tさんがいるべきところには、背後にある廊下側の壁しか映っていない。
訳がわからず教室の中で場所を変えて窓を見てみたが、やはり映らない。
窓際にぴったり寄っても然りである。
どうしようもないのですぐ帰宅した。
家の鏡や窓にはちゃんと映ったという。

Tさん曰く。
「まあ、私も疲れてましたからそんなものを見たんですよね。気のせいみたいなものですよ。鏡に自分が映らないっていうのはすごく気持ち悪かったですけど」