四十/ 木造校舎 その三(54/100)

夏休みが明けてから少しして、研究授業があった。
Tさんも、自分の学級の授業を教育委員会の役員や近隣の学校から来た教員に見せることがあった。
その時、授業中の光景を後のレポートの資料として使いたかったので、偶々手が空いていた教頭先生に依頼して何枚か写真を撮ってもらった。
数日後、写真の出来を教頭先生に聞くとなにやら言葉を濁された。
ピンボケなんですかと聞くとそうではないと言う。
説明するよりも見たほうが早い、と言うことで早速見せてもらった。
写真は綺麗に取れていた。
授業風景は明確に記録されている。
しかし一点、おかしいところがあった。
教室の窓が、全てステンドグラスのようになっているのである。
模様はモザイクのように出鱈目な色の集合に過ぎないのだが、当然教室の窓はそんな色はしていない。
単なる透明なガラス窓のはずだし、研究授業当日もそれはそのままだった。
なぜこんなものが映ってしまったのか、教頭先生はしきりに首を捻っていた。

「単なる光の加減だったと思うんですけどね。もしくはカメラの不調だと思いますよ」
Tさんはそう言うが、窓だけがそんな映り方をするものだろうか。