虫刺され

先週の話だという。
深夜にMさんがふと目を覚ますと、左足の裏がとても痒い。
明りを点けて見てみると、足の裏が何箇所か赤く腫れている。
なぜか、左足ばかり集中して蚊に刺されたらしい。
数えてみたら六箇所も刺されている。
痒くてたまらないので、別室に置いてあった虫刺されの薬を持ってきて塗った。
それで少しは痒みも紛れたので、薬を枕元に置いてまた眠りについた。


翌朝目が醒めてから昨夜のことを思い出し、もう一度左足の裏を確かめてみた。
なぜかどこも腫れていない。
念のため右足も見てみるが、こちらも変わったところはない。
あれは夢だったのかな?
そう思って枕元を見ると、昨夜に使ったままの虫刺され薬が置いてある。
確かに昨夜、別室から薬を持ってきたのだ。
しかし虫刺されはどこにもない。
薬を塗ったとはいえ、たかだか数時間で虫刺されが引いたことなど今まで一度もない。
何だか釈然としなかったが、その時はそれ以上気にはしなかった。


そして昨夜のことだという。
また深夜に目が醒めて、足の裏が痒い。
まさかと思って見てみると、やはり足の裏に虫刺されが六つある。
先週のことを思い出し、また朝になったら消えているのだろうか、と思った。
それで証拠として携帯電話で足の裏の写真を撮ってから、薬を塗って寝た。


翌朝目が醒めてから足の裏を見ると、虫刺されなどない。
やっぱり先週と同じだ。
そう思いながら携帯電話の写真を見返してみると、なぜか写真に写った足の裏にも、虫刺されなどなかった。