水戸での話だという。
四階建てのビルの三階で会議が行われていた。
南側の壁が一面ガラス張りになっている会議室で、そのガラスの手前にホワイトボードを置いて一人がプレゼンテーションをしていた時のことである。
ホワイトボードに集中した視線のその先で、窓ガラスの外をゆっくりと漁船が横切っていった。
甲板には漁師と思しき中年男性が三人ほど立って作業をしているのが見えた。
ガラスに背を向けていた一人を除いて、皆が目を疑った。
街中の、ビルの三階である。
漁船が通り過ぎるはずがない。
数人が慌てて立ち上がり窓の外を覗いた時には、漁船など影も形もなかったという。