鬱作品として評判の『隣の家の少女』(J・ケッチャム)を読みました。
- 作者: ジャックケッチャム,Jack Ketchum,金子浩
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 1998/07/01
- メディア: 文庫
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牧歌的で甘酸い導入部に続く、評判にたがわぬイヤな展開。私の中の殺伐ポイントが急上昇。
別に読み進めるのが苦痛だったりはしませんでしたが、読後イヤな夢見た。
惜しむらくは、もっと前に読みたかったということ。十代の頃に読んでいたらもっと心の底から堪能できて、一週間から半月くらいは暗い気持ちのまま立ち直れず、その後の人格形成に大きな影を落としただろうに。余談ですが十代の頃に読んで大変イヤな気分になった小説としては綾辻行人『殺人鬼』があります。
そんなわけで現在この本、私選「中高生に薦めたい一冊」トップクラスになっております。十代の坊ちゃん嬢ちゃんにお薦めだよ!思春期の少年と、隣の家に引っ越してきた同年代の姉妹との心の交流を描いた一冊だよ!
嘘は言っていません。
この作品に対して率直な印象を二字熟語で表すと「陰惨」「残酷」「米国」と言ったところでしょうか。
あ、最後の「米国」っていうのは単なる偏見です。なんかこう……ステイツの田舎町ってどんな凶悪犯罪でも平然と行われてそうなイメージがあるんですよね……。誘拐した幼児の遺体を何体も壁に塗りこめてる快楽殺人者が潜伏してるような。……我ながらアメリカの方に対して物凄く失礼な偏見だな!
そういうイメージが私の中で根強いのは、幼少期に読んだ「実録!世界の凶悪犯罪」的な読み物のせいでありましょう。
しかしやはりアメリカに限らず、田舎という世界はダークサイドなのです。都市部は明部と暗部がくっきり分かれるものですが、辺境たる田舎はどこまで行っても基本的に暗部しかないのです。中央の秩序が行き届いていない、漠たる混沌の息づく異界なのです。田舎に住んでいる私が言うのだから間違いない。そんな田舎が好きさ。
閑話休題。アメリカの善良な市民の皆さんに対し心から陳謝するとともに、本題です。
読んでいる最中にふと思ってしまったのです。この作品……似てるんですよね、みんな大好き『シグルイ』に。
- 集団のトップが一番正気じゃない。でもみんなその人に逆らえない。
- 正気じゃないトップが、超個人的な情念のはけ口として暴力行為を命ずる。みんなやっぱり従う。
- 残酷無残。
こんな感じの共通点があります。一度そういう目で見てしまうと、もうそういう風にしか見えない。
かくして中盤以降を読み進める私の曖昧な脳裏に、シグルった呟きがかつ消え、かつ結びて久しくとどまりたるためしなし。
「仕置きに散る武士道、仕置きに咲く武士道」
「仕置きつかまつりまする」
「後方から妹の叫び 前方に憤怒のルース」
「悪根を焼き断つるが御けじめ」
「御言い付けにございまするぞ」
「いま見たことは誰にも言ってはいけない。覚えていてもいけない。」
「それはただの序章。闇が密かにはぐくんだ悲しく静かな序章」
いろいろ台無し。
ただ、この作品が漫画化されたとして、掲載誌はREDって感じではないなあ。
しっくり来るのはどこだろう。ビームかfellows!あたりだろうか。