第6番 全知全能文化

子供の頃には母の事でよく苛められました。
「お前の母ちゃんネコミミメイド」って。
恥ずかしくて悔しくて仕方がなかった。
中学生の時とうとう我慢できなくなって、ある日母に言ったんです。
「何でお母さんはネコミミメイドなの!?そんなのもう嫌」って。
母は酷く哀しそうな顔をしましたが、何も言わずにじっと私の暴言を聞いていました。
その翌日からです、母がネコミミメイドをやめたのは。
私は喜んで「お母さん、その方がずっといいよ」なんて言ったりしてたんです。母の気持ちもわからずに。
それからひと月ほどたった頃、母が倒れました。
母はネコミミメイドをやめてしまったら、生きられない体だったんです。
倒れたときにはもう手遅れで、ひとりでは出歩けないほど衰弱していました。
それでももう1度ネコミミメイドに戻れば、いくらかは好くなったかもしれません。
でも母は2度とネコミミメイドになろうとはしませんでした。
母は自分がネコミミメイドであることで娘につらい思いをさせたくなかったんだと思います。子供の愚痴を真に受けて。
半年ほど臥せって母は亡くなりました。
童顔だった母がどんどん枯れ木みたいにやつれていく姿は今でもはっきり覚えています。
私が母を殺したようなものでしょう?
そういう訳です、私がネコミミメイドになろうって決めたのは。