第5番 7つめのあなたへ

音は廊下まで響いていた。
いつもと同じように、先生は音楽室でピアノを弾いていた。
あの頃と変わらず、はっとするほどその姿は綺麗だった。
「先生、お久しぶりです」
聞こえていないのか、演奏の手は止まらない。
「今日はお別れを言いに来ました」
音は止まらない。
「この校舎の取り壊しが決まりました」
先生はこちらを見ようとしない。
「もう、いいでしょう?あなたが亡くなってから、もう20年です」
音が止まった。
先生は顔を上げてこちらを見ると、そのまま消えた。


七不思議、最後のひとつはこうして終わった。