震災覚書

空にのみ規律残りて日の沈み廃墟の上に月のぼりきぬ
与謝野晶子

それでも 相変わらず月があり
丘の斜面に輝いています
暗い影さす人類の大地の上にも
この地球が大きな廃墟になろうとも
巡りめぐって
月は私たちの浜辺を照らし
未来永劫に輝き続けるのです


(中略)


いつも目の前にあると
何もかもすべて消えてゆくなどと決して考えたくはないもの
跡形もなく 消されてしまうものであることも…

(「After all」より抜粋)

  • 震災発生から20日が経ちました。この辺で身の回りの被害やら何やらについてメモしておこうと思います。東北ほどではないにしても一応は被災地の千葉県北東部より。
  • 海からは15キロくらい離れてるんで津波の被害はなかったものの、古い埋立地のために液状化がひどい。地面のいたるところから灰色の泥水が噴出し、道路も陥没したり大きくひび割れたりした。最寄の中学校は校舎が傾いたり天井に穴が開いたりして再起不能になったため、中学生は小学校に間借りすることになった模様。
    • 近くのショッピングモールの駐車場から噴出した砂は集めてみたらダンプカーより高い山になった。
    • 余震に合わせて道路の亀裂が動いているのをリアルタイムで見た。地面も結構簡単に動くということがよくわかって感心した。
    • 電柱も多くが傾いた。地面が液状化すると電柱がマドラーの役目を果たすため、根元が攪拌されて一気に泥が噴出した様子。
  • 地面の亀裂はとても多く、中には深さが1メートルほどの場所も。
  • 地盤の沈下により橋の方が相対的に高くなり、橋の袂に20センチほどの段差ができていた。お蔭で地震直後は車で橋を渡ることが困難になり、長い渋滞の列ができていた。翌日には段差に木材やら鉄板やらを渡して通行可能になっていた。大きい橋は歪みが分散されてあまり大きな損傷には繋がらなかった模様。
    • 道路がガタガタになったので普通自動車よりも農業用の車両の方が走行しやすそうだと思った。履帯が付いていたり車輪がデカかったりするので。
      • というわけで『メタルマックス』なんかだと救急車とかバスとかパトカーとかが荒野を普通に走っているがアレは嘘だということがわかった。乗用車のタイヤだと、ちょっと道路が荒れただけでもうスムーズには走れなくなる。
  • 建物の被害。大抵は屋根の棟瓦が落ちた*1くらいだったが、近所の寺の本堂(築50年以上)は全壊した。更にその周囲でも2軒ほど、同じくらい古い家が倒壊したものの幸いにして死傷者はなし。市内でも何箇所か、住めないレベルの建物被害があったようで、市が仮設住宅を用意した。
  • 当日は当然ながら停電しており、日が暮れた後は鹿嶋の火事がよく見えた。月も満月の直前でかなり明るかったが、星空も随分綺麗に見えた。手回し発電のラジオが大変役に立った。太陽電池も携帯電話の充電くらいには役に立った。電気は地震の翌日には復旧。
  • 新聞も休まず届いた。
  • 地面の広範囲にわたる液状化により水道管がかなりダメージを受け、いまだ復旧せず。毎日小学校に水を貰いにいっている。数日間は市役所から水タンクを載せたトラックが来ていたが、これはただタンクに蛇口を付けただけの代物だったので非常に水の出が悪く、長蛇の列ができていた。しかしその後埼玉の水道局と自衛隊給水車が来てくれて、こちらは水の出がかなり良いので待たずに水を貰えるようになった。
  • ガソリンは二週ほどの間は手に入りにくく、スタンドに長蛇の列ができていた。今では特に待たなくとも買えるようになった。
  • 食料品は特に品薄の様子はなし。地震直後から結構スーパーも営業して品物も普通に並んでいる。断水中なので飲食店は軒並み休業。
  • 田んぼのダメージも深刻な模様。陥没や褶曲により田んぼ自体がガタガタになったことに加え、川から水を汲み上げる機構が駄目になったので、川から離れた位置の田んぼは水が引けなくなってしまったとのこと。川に近い田んぼならばポンプで水を汲み上げることができるので、現在ポンプと発電機の需要が高まっている。
    • 田植えができないほどの被害ならば国の激甚災害認定を受けられるらしいが、認定されたとしても復興支援が受けられるだけなので結局収入はゼロ。農機具のローンが払えないので専業農家は特に厳しい状況とのこと。
  • 余震はまだ続いているが、こう多いと「家具が倒れない程度の揺れなら大丈夫、問題ない」というような変な腹の据わり方ができてきてしまっている。あんまり慣れると大きい奴が突然来たときに咄嗟に行動できない恐れがあるのであまり良い傾向とは言えないのだが。
  • 昨日は暴走族のバイクが2台ほど走っていたので復興してきたんだなと感じる。彼らがもし棘のついた肩パッドなどを装備していた日には逆に復興が遠いしるしであろうが。

*1:棟瓦以外の瓦はどこの家も殆ど落ちていなかった