中学校の休み時間でのこと。
廊下の窓からは校門と中庭が見下ろせる。
校門の方から誰かが入ってきたことに生徒の一人が気付いた。
女性のようだったが、その姿が妙に青い。
青い服を着ているというだけではなく、髪も顔も全身がペンキを塗ったように鮮やかな青い色をしている。
何だあれ、変質者?
他の生徒達もそちらに気付いて、廊下がにわかに騒がしくなった。
しかしおかしいのはその青い女だけではない。
女の後ろには、猫が少なくとも十匹以上は歩いている。
近所の野良猫なのか女の飼い猫なのかわからないものの、猫たちは奇妙に行儀よく青い女の後ろで行列を作っていた。
青い女も不気味だが、猫がなぜあんなに列を作っているのかもよくわからない。
生徒たちはその異様な光景に興奮しながら視線を注いでいた。
女は猫を引き連れてそのまま校舎の方に向かってきており、このまま進めば校舎の中にまで入ってくるかもしれない。
先生に知らせたほうがいいんじゃないのか。
そう言い出した生徒が職員室の方へと駆けていった。
するとそれから間もなく、職員用の玄関から男の先生が青い女の方へと歩いて行くのが見えた。
が、その先生の眼の前、およそ5メートルくらいの距離にまで近づいた所で青い女は急にかき消すように消えてしまった。
煙が風に吹き散らされるような消え方だったという。
先生も驚いた様子で辺りを見回していたが、そんな姿を尻目に猫達は行列を解いてあちこちに走り去ってゆく。
後に通報を受けた警察が調べに来たものの、青い女についてはっきりしたことは何もわからなかった。
そんな出来事があってから、それまで開放されていることが多かった校門は日中もしっかり閉じられるようになったのだという。