清掃中

神奈川のとある駅でのことだという。
Kさんという男性が乗り換えの合間にトイレに向かった。
しかし出入り口には生憎、清掃中の立て看板が置いてある。
乗り換えの時刻も迫っていたし、先程から少し我慢していたところだったのでKさんはそのままトイレに入っていった。
すると中は予想もしていなかったような状況だった。
清掃係のおばさんの姿はどこにもない。
だが、トイレの壁に向かって何人ものスーツ姿の男が並んでいる。
男たちは何をする様子もなく、ただ壁に向かって直立不動の姿勢を崩さない。
(こんな所で何してるんだ?)
異様な光景に圧倒されたKさんだったが、とりあえず用を足して手を洗った。
そしてやっぱり気味が悪いので、トイレを出る前に振り向いてもう一度男たちの様子を窺った。
男たちは忽然と消えていて、そこには誰の姿も無かった。
そこへ丁度清掃係のおばさんが入ってきた。
すれ違ったおばさんの身体からは、なぜかお香の匂いがはっきり漂っていたという。