昭和十一年の未確認飛行物体

大叔父の旧制中学時代の日誌に気になる記述がある。昭和十一年十一月十八日、大叔父が中学一年生のときの記事だ。

僕等が吉田駅*1附近で奇怪なものには目をあいたままぼう然とした。そのありさまは口や筆には言いつくせない程であった。――日吉村*2附近の空に赤い丸が十数箇位並んだと思つたらすぐに棒になつて一分位たつてからぱつと消えた。僕は明日川邊先生にきいて見ようと思つた。

空に何か奇妙なモノが浮かんでいたという。いわゆる未確認飛行物体である。
次の日以降の記述にはこのことについて二度と触れられていないので、結局これが何だったのかここからは全くわからない。本人に聞こうにも、大叔父はこの七年後、二十歳の若さで亡くなっているのだ。
ただ、この簡潔な記述からも大叔父の驚く様子は充分に伝わってくる。「目をあいたままぼう然とした」という位だから、よほど奇怪なものだったのだろう。筆者にもそれが何であるのか、全く見当がつかない。空に浮かぶ十数個の赤い丸。読者の皆さんは何だと思われるだろうか。

*1:旧成田鉄道多古線下総吉田駅

*2:現在の千葉県横芝光町日吉地区