記念写真

二十年近く前のことである。
Hさんが通っていた中学校は、生徒数の減少のため、Hさんたちの卒業を最後に廃校になった。
母校がなくなってしまうことを惜しんで、Hさんは卒業式の日に友人たちと校内のあちこちで写真を撮った。
撮った写真は春休み中に友達同士で見せ合おう、と約束したので、五日ほど後でHさんの家に写真を持ち寄った。
すると一人の友人が一枚の写真を指して、変なものが写ってるんだけど、と言いだした。
それはHさんたちが校舎の前に並んで写っている写真だったが、友人が指さしているのは背後の校舎である。
校舎の向かって右端の窓に、誰かの顔が三つ並んでいるのが見える。
それも横にではなく、縦に並んでいる。
横に並んでいるならばただ並んで立っているだけなのかもしれないが、顔だけが縦に並んでいるのは一体どういう状態なのだろうか。
しかも、三つの顔はみな同じ顔のようだ。性別もよくわからないような白っぽい顔が、窓ガラスに張り付いてHさんたちの方を見つめている。
「何これ、気持ち悪い……」
Hさんたちが口々にそう言うと、最初にそれを指さした友人は、それだけじゃないの、と言う。
その写真には一緒に写真を撮った友人たちが全員写っている。
誰かにシャッターを頼んだ覚えはないし、使い捨てカメラだから時限タイマーなどというものも使っていない。
いったい誰がその写真を撮ったのだろうか?
そもそも、誰一人としてその場所で写真を撮った記憶がなかった。


あまりに気味が悪いので、その写真はすぐに庭で焼いてしまったのだという。