大根と鼠の二十日目


井坂先生に合掌。
最後までブレない魅力的な悪役であった。




遠方に住む祖母から聞いた話。
祖母の同年代の知人に、ゴミを最寄の川に捨ててしまう女性がいるという。
生活ゴミは全て、家の前を流れる川に投棄してしまうらしい。
当然ながら彼女の住んでいる町にもゴミの収集規定があり、川に捨てていいはずはない。
ないのだが、誰が言ってもやめないという。


不法投棄するのはともかくとして、捨てる場所が川だというところがちょっと面白かった。
川を投棄場所として扱うのは伝統的な考え方であるなあ、と思ったのである。
歴史上、川というのは時により水源であったり境界であったり障害であったり通路であったり、色々な意味を持ってきた。
川が何かを捨てる場所として扱われるのは別段特別なことではなくて、例えば殺人者が凶器を捨てる場所として川はよく選ばれる。
都合の悪いもの、目の届くところに置いておきたくないもの、そういうものを追いやってしまう格好の場所として川は使われ続けてきたのではないだろうか。


そういえば私が中学生の時、こんなことがあった。
ある朝、通学路の途中にある用水路に奇妙なものが浮いていた。
桃色をしていてバスケットボールくらいの大きさがある。
浮いているからには軽いのだろう。ビニール製のように見える。
丸くて中央に一筋、谷間がある。
まるで大きな桃である。桃太郎。
登校途中にそれを見つけた私はしばし観察し、やがてそれの正体に気付いて、ゲラゲラ笑いながら学校に向かった。
空気の詰まったビニール製臀部だった。