赤いジャージ

Nさんが中学生のとき、学校の行事で宿泊学習に行った。
湖畔の施設でカヌー体験をしたのだが、カヌーを漕いでいる最中に何気なく岸に目をやると、赤いジャージ姿の人たちがいた。揃って上下えんじ色のジャージを着ている。
順番待ちをしているクラスメイトたちとは離れたところに、七、八人くらい水際に並んで立っているのが見えた。
Nさんやクラスメイトたちは中学校指定の紺色のジャージを着ている。赤いジャージということは同じ学校の生徒ではない。
顔かたちまではよくわからないが、揃ってジャージを着ているから他の学校の生徒だろう、と思ってそれ以上気にせずカヌーに集中した。
岸に上がったときには赤いジャージの人たちはいなくなっていた。

 

その日の夕食の頃からNさんと同じ班の友達がひとり、体調を崩して別室で寝かされることになった。
気持ちが悪くて夕食が食べられず、熱もあるという。彼女はその夜のうちに親が迎えに来て、帰ってしまった。
幸い大したことはなかったらしく、翌週から彼女はいつも通り登校してきたが、しばらく後になってからNさんにこんな話をした。
カヌーのときさ、赤い人たち見なかった?
Nちゃんも見たんだ。やっぱりいたんだ。
あれジャージじゃなかったよ。
首から下が真っ赤な色をした人だった。
ジャージの色じゃなかった。そんなの着てないのに真っ赤だった。あれは火傷かなにかだよ。
あれを見たときからずっと気持ちが悪くて、でもお母さんが迎えに来て湖から離れたらすっと楽になったの。
あんなの見るんじゃなかった。

 

なにそれ、火傷した人たちがあそこにいたってこと? それを見て具合悪くなっちゃったの?
そうNさんが訊ねると、友達は首を横に振った。
あんなほとんど全身火傷した人が生きていられるわけないじゃない。そういうことよ。