脚上げ

Mさんが大学生だったある日、友人の部屋に三人で集まって過ごしていた。
するとベッドに腹ばいになってスマホを眺めていた友人がちょっとやめてよ、と言いだした。
Mさんともうひとりがそちらに目を向けると友人が脚を上げている。
何よ、ちょっと、と言いながら、友人は腹ばいになったままの体勢で脚だけを天井に向けて高く持ち上げているので、背中が弓なりに曲がっている。
まるでシャチホコだ。よくこんなポーズとれるな。
何してるの? ヨガ?
Mさんが問いかけると、友人は違うわよ! と怒鳴る。必死な顔だ。
誰が脚掴んでるの!? やめてよ!
友人はそう叫ぶが、Mさんたちの目には脚を掴んでいる者などいない。自分で脚を上げてふざけているにしては、表情が険しい。
そうしている間にも、脚は次第に上がっていく。脚が天井へとまっすぐ向いて吊り上げられるくらいになってきて、見ているMさんたちにも事態が飲み込めてきた。
こんなポーズ一人ではできない。何か変だ。
慌てて二人がかりで脚に取り付き、体重を掛けて下ろそうとするが、何か大きな力で上に吊り上げられているようで、びくともしない。
それこそ見えない何かが上から友人の足首を掴んで、ものすごい力で上に引っ張っているかのようだ。
友人はほとんど逆さ吊りのような体勢になって、涙ぐんでいる。
とにかくこのまま上に引き上げられるとまずい気がする。Mさんたちは全力で友人の脚を押さえた。
するとぷつりと糸が切れるように吊り上げる力が消えて、友人を力一杯ベッドに叩きつける形になってしまった。三人でベッドの上に倒れ込み、Mさんは体勢を崩してベッドから落ちた。
友人は肩を痛めてそれから一週間ほど湿布を貼っていた。
一体何が起きていたのか三人ともさっぱりわからなかったが、友人はその部屋に一人で過ごすのが怖くなって、少ししてから引越してしまった。