Bさんが職場の同僚の家で飲み会をやった。集まったのは独身の同僚三人で、翌日は休日だったので深夜まで飲み明かしてそのまま雑魚寝した。
ふとBさんが目を覚ますと部屋はまだ暗く、壁の時計を見ると午前四時前だった。もう一眠りするかと思ったが、何やら部屋に甲高い音が響いている。
どうも部屋の反対側で横になっている後輩のほうから聞こえる。歯ぎしり?
カカカカカッ。
ジャングル奥地の鳥の声を彷彿とさせる、奇妙な音だ。
あいつよくこんな音出せるなあ。
うるさいとは思うものの、半ば感心しながら暗い部屋の中でその音を聞いていた。
すると次第にその音が位置をずらしたように思えた。
あれ?
後輩の方に目をやったが、相変わらず部屋の反対側に横になっている。だというのに歯ぎしりの音だけが天井のほうから聞こえる。
――これ、本当に歯ぎしりの音なのか?
天井に目を向けても、音の主らしきものは見えない。音だけが、赤ん坊が這い回るくらいの速さで天井を行き来している。
灯りを点けてよく見ようとBさんが起き上がったところで、甲高い音は聞こえなくなった。
翌朝訊いてみたが、その日集まった誰にも歯ぎしりの癖はないという。