川面

宅配業者のWさんの話。
担当する地域に川があり、短い橋がかかっている。配達の途中で何度もそこを通るのだが、橋の上から脇を見ると時々川べりに女の子が座っていることがあった。
ちょうどこの橋の先が交差点で、信号待ちでよくこの橋の上で停まるので、そのたびに何となく川に目を向ける癖がついた。
するとそこに時折、女の子の姿がある。
二十歳くらいの、短い髪の女の子だ。いつ見かけても同じ場所にしゃがみこんで、じっと川面を眺めている。距離があるから表情まではわからない。
見かける時間はまちまちで、午前中のこともあったし夕方のこともあった。
午前から午後まで配達して回っている身からすると、初めてその姿を見たときには暇そうで羨ましいと思った。何度も見るうちに疑問が湧いた。
一体何のために、あんなに熱心に川を眺めているのだろう。よほどあの場所が好きなのだろうか。

 

ある日の夕方、いつものように橋を通ったWさんはまた無意識に川に目を向けたが、このときはあの子の姿はなかった。
それで視線を前に戻そうとしたのだが、橋の下を誰かがくぐって歩いていくのが見えたのでそちらを見た。
あの女の子だとわかった。座っていないところを初めて見る。こちらに背を向けていつもの位置へと進んでいく。
生身の人とは思えなかった。いつもこちらに見せていた半身だけしかない。左半分だけの体でふらつきもせずに歩いている。
息を呑んでその姿を見ていると、後ろの車にクラクションを鳴らされた。いつの間にか信号が青だ。
慌てて前に進んだが、その後は橋で女の子の姿を見ることはなくなった。