いますか

あるときGさんが近所の人からこういうことを言われた。
お宅の伯父さんに会いましたよ。
Gさんの家のすぐそばで、にこやかなお年寄りに声をかけられた。「Gは家にいますか」と訊いてくる。
それが近所の人も面識のある、Gさんの母方の伯父さんだった。
Gさんが家にいるかどうかはわからないと答えると、伯父さんは礼を述べてGさんの家の門に入っていったという。
そういう話が一度ではなく何度もあったのだが、そのたびにGさんは困惑した。伯父さんはもう一年以上前に亡くなっているからだ。
その話からすると伯父さんは自分を訪ねてきたようなのだが、なぜかGさん本人は伯父さんの姿を見ていない。
伯父さんの妹であるGさんの母に話してみたのだが、どういうわけか見当もつかないという。
兄さんはいつもニコニコしてるわりに、ちょっと何考えてるかわかんないところあったから……。母はそう言う。
伯父さんの息子である従弟にも伝えたが、そちらにはそういうことは一切起きていないという。息子や孫のところに出てこないで、なんでそっちに出るんだ? と逆に訊き返されてしまったが、Gさんも直接見たわけではないので何とも答えようがなかった。
一度はGさんの職場に伯父さんらしき人が訪ねてきたことがあり、応接室で姿を消した。騒ぎにならぬよう、気が変わってすぐ帰ったんでしょうと取り繕ったものの、Gさんも流石にうんざりしてしまった。
すぐに伯父さんの墓参りに行き、何か言いたいことがあるなら自分のところにはっきり出てきてくれと拝んだ。それ以降Gさんのところに伯父さんが姿を見せたということはないが、伯父さんを見たという話も絶えてなくなった。
なぜ伯父さんが訪ねて来ていたのかは今でも全くわからないという。