ポスト

Wさんが通勤で使う駅までの途中に郵便局がある。
ある夜、帰りにその前を通りかかるとポストの投函口に白い物がはみ出している。街灯の光を受けて、白い手袋かなにかが投函口に挟まっているのが見える。
誰かの悪戯か、あるいはうっかり忘れていったのか。どうせ明日には郵便局の職員が気づくだろうが……。
そう考えながら通り過ぎようとして、ふと視界の端でその手袋が動いたような気がした。
怪訝に思って再び視線を向けると、手袋の指が二本、バタバタ動いている。
どういうことだ、と近寄ってみると、そもそも手袋ではなかった。
小さな人間の下半身が投函口に挟まっているのだ。その真っ白な脚がもがくように動いている。平泳ぎの脚のような、妙な動きだ。
人形にしては動きが生々しい。これ、上半身はどうなってるんだろう。
引っ張り出そうとして手を伸ばしたところでそれはズルっと投函口の中に落ち、蓋が音を立てて閉まった。
ポストの中で何かが動くような気配はない。
Wさんは急に寒気を覚えてその場を立ち去ったという。