よく晴れた初夏の昼下がり、Eさんが友人との待ち合わせで公園にいた。
公園の隣に神社があり、境界は長い土塀になっている。土塀に沿うようにベンチが置かれていて、Eさんはそこに腰掛けて友人が来るのを待っていた。
スマホの画面を眺めながら時間を潰していたが、ふっと手元が暗くなった。雲が出てきたのかと思って上を見上げたところで誰かと目が合った。
覆いかぶさるように、真上に顔がある。Eさんの背後から知らない人が覗き込んでいる。
ひっ、と息を呑みながら弾かれるようにベンチから立ち上がり、数歩駆け出してから振り返った。
ベンチの周りには誰の姿もない。
周囲を見ても誰もいない。
荒い息をつきながら立ち止まった。今の誰?
そもそもベンチは神社の塀にぴったり背をつけて置かれている。Eさんはそこに座っていたのだから、背後に誰かが立つスペースはない。
それではあの顔はどこから出ていたというのだろう。Eさんからは頭部しか見えていなかったので首から下がどうなっていたのかはわからない。
位置関係で考えると、塀から首が突き出していたか、あるいは首だけが空中に浮いていたのではなかったか。
Eさんはびくびくしながら公園を出て最寄りのコンビニに入り、スマホで友人に待ち合わせ場所変更のメッセージを送信した。
後から思い返してみると、至近距離ではっきり見たはずなのに、上から覗き込んできた顔がどんなだったかよく思い出せないとEさんはいう。唯一はっきり記憶しているのは、まん丸に見開いた両目だけだという。