白窓

真冬にHさんが自宅で過ごしているときのこと。
ふと窓に目をやると真っ白になっている。
雪かと思ったがそうではないことはすぐわかった。
雪が積もって一面雪景色になっているのではない。窓一面が真っ白になっていて何も見えないのだ。
そもそも雪の予報もなかったし、ずっと晴れていたから雪ではないだろう。
それにしてもこれはなんなのだろうか。窓が外から白いものに覆われているのか。
白い布か何かが覆いかぶさっているようにも思えたが、布にしては弛みや皺が一切ない。
とりあえず窓を開けてよく見てみようかと思ったが、その後どうなったか記憶が途切れている。


寒さで我に返るとなぜか自宅ではなかった。
見回すとどこかの公園のようだ。Hさんはその片隅のベンチに防寒着もなしに腰掛けていた。自宅にいたときの格好のまま靴も履いていない。
混乱しながら周囲を歩くと、どうやらそこは隣町の公園だ。
自宅から徒歩で三十分くらいの場所だが、どうしてこんなところにいるのだろうか。
窓が白くなって、それを開けようとしたらここにいた。窓を開けようとしたせいでこうなったのだろうか。
寒さに震えながら歩いて帰ると、窓はもう白くなかった。Hさんは翌日から高熱を出して四日間寝込んだ。