トランペットとセーラー服

高校の吹奏楽部の話。
近隣の二つの高校の吹奏楽部と合同で演奏会を開催した。
本番は盛況のうちに終わり、会場となった文化ホールから撤収するときのこと。
楽屋を片付けて、そこにいた数人全員が廊下に出た。
中にもう誰もいないことをチェックしてから、副部長がドアを閉めたその直後。


パアァーッ! パララララッ!


楽屋のドア越しにトランペットの音が鳴り響いた。
中に誰も残っていないことは確認済みだ。廊下にいた全員が顔を見合わせた。今の音、誰が?
副部長がすぐさまドアを開ける。
そのとき楽屋を覗き込んだ全員が確かに見た。
中にセーラー服を着た女の子が何人かいて、トランペットやトロンボーンを手にしている。


副部長はすぐにドアを閉めて呟いた。あれ誰?
今日の演奏会に参加した三つの高校で、制服がセーラー服なのはひとつもない。
顔はよく見えなかったが知っている人とも思えなかった。
楽屋の中はしんと静まり返っている。副部長はもう一度ドアを、先程よりゆっくり開けた。
誰もいない。
セーラー服の女の子たちが急に現れたのが不思議だったが、ドアを閉めたほんの僅かな間に消え失せたのは怖かった。
また楽屋から楽器の音が聞こえてこないうちに、みんな急いでその場を離れたという。