小さな男たち

Eさんは就職してから五年間、八王子のアパートに住んでいた。
時折このアパートに小人が現れたという。


初めてそれを見たときはこうだった。
日曜日の午後、Eさんは自室でテレビを見ながら横になっているうちに眠くなってきた。
このままひと眠りしようかと思っていると、ギィィィ……と軋む音がする。普段部屋の中では聞かない音だ。
何だ、と思って目だけ動かしてそちらを見ると、風呂のドアがゆっくり開いて細く隙間ができている。
しっかりドアが閉まっておらず、些細な振動かなにかでひとりでに開いたのだろうか。あんな軋んだ音を立てるなんて、油を注してやったほうがいいか。
そんなことを考えながらぼんやり眺めていると、ドアの隙間からひょいと小人が出てきたので息を呑んだ。
身長わずか十センチほどの男が三人、ぞろぞろ出てきたかと思うと風呂のドアの向こうにある玄関の方へと並んで走っていく。
トトトッと小さな足音がした。
すぐにEさんも起き上がって後を追ったが、玄関周辺にはそれらしき姿は見当たらない。
どこへ行ったんだ、と見回してから気付いたが、先程開いたはずの風呂のドアが閉じている。ゆっくり開けてみたが、軋む音はしなかった。
改めて思い返してみると、あの小さな男たちがどんな服装をしていたか、よく覚えていなかった。ただ、街で当たり前に見かけるような普通の中年男の顔だったことが印象的だった。
それ以降、家の中やすぐ近所で同様の小人を何度か見かけたという。