告白

Nさんは友人の友人として紹介されたKさんという女性と意気投合して、何度か二人で遊びに行った。
会うたびに相手のことが気に入ったので、恋人として付き合ってほしいと伝えることにした。
それでまたKさんを誘い、車で海まで出かけた。
浜に着いたときはちょうど夕刻のオレンジ色の空。海水浴シーズンでもないので人の姿は他にない。風も穏やか。
ムードは申し分ない。
並んで砂浜を歩きながら、さあ告白するぞと意を決したそのときである。
Kさんが何かに気づいたように小さく声を上げ、沖のほうを見た。釣られてNさんもそちらに視線を向ける。
夕焼け空に何かが浮いている。黒いボールか何か。
眺めていると次第に大きくなってくる。こちらに向かって飛んでくるようだ。
もしかしてUFO? スマホで写真撮るか?
そう思ったところで風に吹かれたのか、黒いボールの表面にブワッと毛が巻き上がった。
その瞬間、それが何なのかをはっきり理解した。

顔。

髪の毛。
あれは首だ。
人の首が飛んでくる。
NさんとKさんは同時に声を上げて逃げ出した。後ろを見ずに車に戻り、寒くもないのに震えながら海を後にした。
どうしてあんなものが飛んできたかはどうでもよかった。あの場所にもう一瞬でも留まりたくなかった。
飛んできた首はどうなったかわからないが、とにかくその日は告白どころではなかった。