最初の挨拶

小学校教師のHさんの話。
新しく赴任する学校に初めて行った時のこと。
校長先生に挨拶するために校長室に向かう廊下で、子どもたちに出くわした。三年生か四年生くらいの男の子たちが五人、賑やかに話しながら歩いてくる。
そしてHさんに元気よく挨拶してきた。
「こんにちはー!」
Hさんも笑顔で挨拶を返したが、彼らの奇妙な格好が気になった。
顔から手足まで、肌という肌を鮮やかに赤や青や緑やら、それぞれ一色に塗っている。
服装には特に奇抜なところはなかったが、何かのイベントのための仮装だろうか。
彼らが去っていったほうを振り返ったが、もう後ろ姿は見えず、声も聞こえなかった。
校長室に入ったHさんは、先程廊下で会った子供たちが元気に挨拶してくれたことを話した。すると、なぜか校長先生は嬉しそうに微笑んだ。
今日児童はみんな午前で帰ったんですよ、と言う。
じゃああの子たちは何してたんでしょう、と尋ねると、校長先生はまた微笑んで言った。
ですから児童は校舎内には残ってないんですよ。
話がよくわからないと怪訝な顔をするHさんに、校長先生は続ける。
新しい先生がいらっしゃると、たまにそういうことがあるようです。気に入った先生じゃないと現れないと聞いています。元気に挨拶してくれたんでしょう?
多分、気に入られた証拠ですよ。


翌年、別の先生が新たに赴任してきたときにも同様のことがあったという。