脚越し

主婦のKさんが自転車で買い物に出かけた。
ちょうど近くの高校が下校時刻だったようで、道の前方を高校生の女の子が四人ほど横並びで歩いている。
邪魔だなあ、あれじゃあ追い越せないじゃない、などと思いながらペダルを漕いでいると、高校生たちの足元で何か水色をしたものがチラチラ動いていることに気がついた。
高校生の脚の隙間から向こう側に水色をしたものが見えているのだが、どうもそれは水色の服を着た幼い女の子のようだった。
幼い女の子は高校生の脚の前あたりをしきりに左右に動き回っている。
あれでは高校生たちも歩きにくいのではないか、と思いながらKさんは後ろから見ていたが、どうも高校生たちは女の子に構う様子がなく、足元など見ずに平然とおしゃべりしながら歩いている。
すると前方から別の自転車がやってきたようで、高校生たちがゆるゆると道の脇に寄った。
自転車が高校生たちとすれ違うとすぐに元の横並びに戻ったが、今度は水色の女の子がいなくなっている。
道はブロック塀と川に挟まれていて、横に隠れるところなどない。
不審に思っているうちにKさんは高校生に追いついた。
ベルを鳴らして道を開けてもらい彼女たちを追い越したものの、やはり彼女たちの周りに幼い女の子の姿など無かった。
一体どういうことだろう、と考えながら買い物に行ったKさんだったが、思い返してみれば奇妙だった。
高校生の脚越しに見た女の子は、こちらに背を向けて直立したまま左右に滑るように動いていたように見えていたのだという。