Mさんが自室でふと目を覚ますとまだ真っ暗だった。
何となく尿意を覚えたのでトイレに行ってから寝直そう、と枕元の電気スタンドのスイッチを入れようとした。
すると伸ばした右手が何か柔らかいものに触れた。
何これ、とグッと掴むと少しひんやりとして指の間でモゾモゾ動く。
――げっ、ネズミか何かか!?
気持ち悪いと思いながらも掴んだものを離さず、左手で明かりを点けた。
明るくなってみると、右手が掴んでいたものはネズミではなかった。
とは言ってもそれが何なのか判断が付かない。
右手で掴んだものは手からはみ出して長く続いており、窓のカーテンの端まで繋がっている。
その先はカーテンの陰になって見えないが、見えている部分は5センチくらいの太さで、黄色っぽい色をしている。
ヘビのようでもあったがウロコがあるわけでもない。ただMさんが掴んだ部分が柔らかく変形して、嫌そうにくねくね動いている。
混乱したMさんはカーテンに隠れている部分が気になるあまりに掴んでいる右手をグイッと引っ張った。
すると思いの外強い力で引っ張り返され、その拍子に掴んでいた右手が滑ってそれを離してしまった。
その黄色くて長い何かは掃除機の電源コードを巻き戻すような勢いでカーテンの向こうにスルスルッと消えていく。
慌ててカーテンをめくり上げたMさんだったが、窓は寝る前同様施錠されたままにもかかわらず、黄色くて長い何かは影も形もなかった。
それ以来Mさんは部屋の明かりを点けたまま寝るようになったのだという。