金属音

岩手の海での話。
学校帰りに友達と海辺の道を歩いていると、海の方から突然大きな音が鳴り響いてきた。
金属が擦り合わさるような、あるいは機械がきしむような、何とも嫌な音が、ひどく大きく聞こえたという。
しかし海は穏やかな様子で、見える範囲では一隻の船もなく、音の発信源となりそうなものは見当たらない。
音はたっぷり数分間鳴り続けた。
すると行く手に小さく見える港から漁船が四、五隻一斉に出て行くのがわかった。
漁に出るのは早朝のはずで、そんな時刻に漁船が出て行くのを見たことがない。


翌日の新聞に、沖で遺体が揚がったという記事が出た。
もしかすると昨日の漁船はそれを捜しに行ったのではと思ったものの、そのこととあの金属音に関係があるかどうか、そもそも金属音が何だったのかはその後もわからないままだという。