日めくり

Eさんが寝ていると、部屋の中が何やらざわついている。
壁を手で叩いて回ったり、裸足でペタペタ歩きまわる音がする。
なんだ、泥棒か、変質者か!?と暗い中で目を凝らしてみるものの、窓から差し込む街灯の光にぼんやり照らされた部屋には、Eさん以外誰の姿もない。
だというのに音だけはうるさいほど部屋中を動き回っている。
間違いない、何か得体のしれないものがいる。
そう感じたEさんはひとまず寝ているふりをしながら様子を伺っていたが、そうしているうちに壁の辺りでびりっ、と紙を破く音がした。
そちらに目をやると壁にかけた日めくりカレンダーが一枚ずつ、ひとりでに破れて床に落ちていく。
まるで見えない手が一枚ずつ破り取っていくようだった。
五枚ほど破れて床に落ちたところでEさんは癇癪を起こした。
「散らかすんじゃねえ!元通りに直しておけよ!絶対だぞ!」
突然そう怒鳴ったところ、壁を叩く音も足音もピタッと止み、カレンダーもそれ以上破れなくなったようだった。
やれやれ、と一息ついたEさんはそのまま再び眠った。


そして翌朝。
目を覚ましたEさんは昨夜のことを思い出し、カレンダーに目をやったところ、昨日Eさん自身が破ったところまでの日付になっている。
昨夜のことは夢だったか、とカレンダーに顔を近づけてよく確かめようとしたところ、五枚ほどがはらりと落ちて、床に散らばったという。