救急車

千葉市に住むTさんの話。
自室で寝ていると、救急車のサイレンの音で目が覚めた。
部屋の中はまだ真っ暗で、時計に目をやるとまだ二時過ぎくらい。
すぐに寝直そうと目を閉じたものの、だんだん近づいてくるらしいサイレンが耳について寝付けない。
サイレンはどんどん大きく聞こえてきて、やがてTさんのアパートのすぐ前あたりまで近づいた。
なんだ、すぐ近所で急病人か?
少し気になったTさんが目を開けると、部屋の中が真っ赤に染まっている。
窓からカーテンを透かして救急車のパトランプの光が強く照らしていて、部屋中を赤く見せていた。
何だこれ、窓のすぐ外に救急車が停まってるのか?
しかしそんなはずはなかった。Tさんの部屋は三階で、窓の真下に救急車が停まったとしてもその光が部屋を照らすほど強く届くことなどありえない。
ならばこの赤い光はなんだ?
カーテンを開けて外を確認しようとTさんが布団から身を起こした途端、赤い光は消え失せてサイレンの音も聞こえなくなった。
窓の外を見ても、闇の中に住宅街がぼんやり見えるばかりだ。
寝ぼけたのかと思い、すぐにまた眠りについたTさんだったが、翌朝おかしなことに気がついた。
まるで日光浴でもしたかのように、一晩で顔と両腕が真っ赤に日焼けしていたのである。