七人

埼玉の中学校で、土曜日に男子バレー部の試合が行われていた。
市内の別の中学校のチームを招いての練習試合だったが、実力が伯仲しているためになかなか白熱した展開となっていた。
お互いに1セットずつ取った上での3セット目開始時のことだったという。
サーブを打とうとした時、不意に審判の笛が鋭く鳴った。
怪訝な顔をする選手たちに対して、審判はコートの片方を指さした。
指さした先のコートには、選手が七人いる。
バレーボールは六人で戦うものだから、一人多い。
勝手に出たのは誰なんだ、とお互いの顔をよく見ると……同じ顔がふたつあった。
ある選手が、二人に増えている。
双子でもないのに、まったく同じ顔と格好をした選手が二人いるのだ。
何よりも本人たちが一番驚いていたようだったが、他の選手が二人に近寄ろうとしたその時、片方が脱兎のごとく駆け出した。
そのまま体育館の壁に猛然と突進し、見ていた皆が「ぶつかる!」と思ったその瞬間にふっと消え失せた。
何とかその場をおさめて試合は続けられたが、双方ともにすっかり集中力を欠いてしまっていたという。