全校集会

茨城にある中学校でのことだという。
ある時、体育館で全校集会が開かれ、ほとんどの教師と全校生徒が集まった。
集会といっても大した内容ではなく、いくつか部活動関係の賞状授与があり、その後は校長先生が話をして終わる予定だった。
その校長先生の話の最中のこと。
ステージ上に置いてあるグランドピアノが、突然大きな音を立てた。
鍵盤をやたらめったら叩いているような不協和音が立て続けに鳴り響く。
しかしその日はピアノを使う予定もなく、その上にはカバーがかけてあって鍵盤の蓋も閉じたままだった。
何が起こっているのかわからず、教師も生徒も呆気にとられたが、すぐに我に返った数人の先生がステージに上がった。
カバーを取って上部の蓋を開けてみるものの、なぜピアノから音が出ているのかわからない。
特に変わった仕掛けも見つからなかった。
その頃になってやっと状況を理解し始めた生徒たちの中には、不安で涙を浮かべる者も出た。
そして一人の先生が今度は鍵盤の方の蓋を開けてみると、その途端に音はぴたりと止んだ。
鍵盤の方にも特別変わった様子はなかったが、とりあえず音が止まってほっとした、その次の瞬間だったという。
今度は体育館の壁に付いたスピーカーから、誰かが話しているような声が流れだした。
録音を早送りしたような甲高い早口で、何を言っているのかはほとんど聞き取れない。
体育館のスピーカーは他の校舎の放送系統とは独立していて、体育館の放送室からしか使えない。
誰かが放送室で悪戯をしているのか?
ステージ上にいた先生たちがステージ袖からその奥の放送室に駆け込んだが、機材は電源すら入っていなかったという。
スピーカーからの声は止まる気配もない。
急遽集会は中断され、その後体育館のスピーカーは取り外されてしまったという。
というのが三十年ほど昔のことで、今でもその学校の体育館にはスピーカーが付いていないということである。