坊主頭

Yさんが高校二年生の時の話。
昼休み、食事の後で友人と雑談をしながら窓の外を眺めていた。
教室は二階にあり、窓の下はグラウンドへの通り道になっている。
午後の授業が近づいてくると、眼下を体操服姿の生徒がぽつぽつ歩いて行った。
見るともなしに彼らの姿を見ていたYさんだったが、その中の一団に視線を引きつけられた。
六人ほどが固まって歩いているのだが、その中の坊主頭の一人が頭ひとつ背が高い。
つまり、他の生徒の頭の上に一人だけ坊主頭の顔が突き出て見えている。
ずいぶん大きいな、バレー部かな、などと思いながら眺めていると、どうも様子がおかしい。
背が高い生徒はこちら側に顔を向けているのだが、そのままずっと向きが変わらないのだ。
手前を歩いている生徒と会話しているのか、それにしても全く進行方向を見ていない。
どこ見て歩いてるんだ?
Yさんが訝しんでいるうちに、その五人組は校舎の角をグラウンドの方へと曲がっていった。
そして頭ひとつ上に見えていた坊主頭だけが、方向を変えずに空中を平行移動していったという。