ざわめき

Sさんが中学三年生の時の話。
授業中、隣の教室からざわつく声が聞こえてきた。
Sさんのクラスは先生が説明をしているところだったので、隣の騒ぎがよく響いた。
何で盛り上がっているのかわからないが、笑い声や叫び声が混じった大変な騒ぎようである。
隣の先生は注意しないのだろうか。或いは先生が不在で自習なのだろうか。
そんなことをSさんが考えていると、Sさんのクラスで授業をしていた社会の先生も隣の騒ぎが気になったようで、様子を見るために教室を出ていった。
すぐに戻ってきた先生だったが、何やら釈然としないような面持ちに見える。
その後も隣の騒ぎは断続的に聞こえてきたが、授業はそのまま続けられた。
授業が終わってからSさんがトイレに行こうと教室を出ると、教室の前の階段から隣のクラスの生徒達が揃って上がってきた。
どうやら、前の時間は隣のクラスは移動教室だったようである。
そこでSさんは違和感を持った。
――移動教室だったということは、隣には誰もいなかったはずだ。
――じゃあ、さっき騒いでいたのは一体誰だったんだ?
どうしてもそこが気になって、Sさんは後で先程の社会の先生に話を聞きに行ってみた。
Sさんに問われた先生は、歯切れの悪い調子で語った。
先生が廊下に出た途端にあのざわつきは聞こえなくなり、隣の教室も無人で静まり返っていたという。
「多分、音の反響か何かで離れた教室の声が響いてたんだと思うんだけどな」
先生はそう言ったが、Sさんにはあのざわつきは隣の教室から響いていたようにしか聞こえなかったという。