浮くもの

今日あったことだという。


高校生のTさんが下校していたところ、一緒に歩いていた友人のひとりが「何だあれ?」と声を上げた。
友人が指差す方を見ると、道路の反対側の林の上に何か白っぽいものが浮いている。
ビニール袋か、あるいは風船だろうか。
ひと目見たTさんはそう考えたが、そういったものが風に吹かれて浮いているにしてはおかしい。
何しろ、空中の一点に止まったまま動かないのである。
そもそも、風もほとんど吹いていなかった。
では何なのか。
丸い。
大きさはスイカくらいだろうか。
白っぽくもあり、銀色っぽくも見える。
しかしいささか距離があるせいで、細部はよくわからない。
するとTさんたちの見ている前で、その何かが動き出した。
水平に滑るように移動してゆき、五秒ほど進んだところでふっと急に消えてしまったという。
UFOか?
友人が言った。
人魂かもよ?
もうひとりの友人が言った。