泥の上

一晩中雨が降っていた翌朝、起床したEさんが玄関の戸を開けると、門から玄関の前までが一面ぬかるみになっている。
しかし、Eさんの目を引いたのはその泥の上に付いた一筋の足跡だった。玄関からまっすぐ門に向かって歩いた足跡が、はっきり残されている。
はじめは新聞配達のものかとも思ったが、新聞受けは門の脇にあるので新聞屋が玄関まで来ることはない。なにより足跡は一筋しかない。玄関から門に向かって付いているところからして、外からやってきた人が付けたものではない。
しかし、他の家族は全員家の中にいる。Eさんは首を捻った。起きてきた家族たちにも聞いてみたが、誰も心当たりがなかった。


一体何が家から出て行ったのだろうか。