Fさんが高校生の時の話というから二十年ほど前のこと。
夏休みに同級生の友人たちと計画して、泊りがけで隣県に出かけた。
湖に臨むキャンプ場のバンガローに泊まり、レンタルした自転車で湖を一周したり、バーベキューをしたりして楽しく過ごした。
同行した友人の一人が写真係で、使い捨てカメラでみんなの姿を収めていた。
Fさんも写真の出来上がりを楽しみにしていたので、一週間ほど経って写真が出来上がったと聞いて、早速見せてもらった。
欲しいものがあったら焼き増しする、というので一枚ずつよく見ていく。
どれを見ても旅行の各場面が蘇ってきて、なかなか飽きない。
ひと通り見たところで、ふと気がついた。
そういえば、自転車で湖を回ったとき、みんな揃って撮った一枚がなかったっけ?
湖畔の駐車場で、居合わせた観光客にシャッターを押してもらったのを覚えている。
しかし、ひと通り見た中にはそれらしき一枚はない。
あの集合写真はどうしたんだ?撮れてなかったのか?
写真係の友人にそう聞いてみると、彼は急に真剣な顔をした。
見せてもいいけど、見たら人生観変わるかもよ。
真剣な顔でそんなことを言うので、Fさんは笑った。
何それ、そんなに変な写りだったのか?
そう聞くと、友人は黙って鞄から一枚の写真を取り出した。
ひと目見て、Fさんは友人が言った意味を理解した。
湖を背後に撮った集合写真である。
写っている一同は、Fさんを含め、頭部だけが上下逆転していた。