卒業アルバム

大掃除をしていたOさんは、押入れの中から久しぶりに中学校の卒業アルバムを発見した。
卒業してからかれこれ二十年近く経っている。
懐かしさから思わずページを開くと、見覚えのある顔が幾つも並んでいた。
故郷を離れて就職したために当時の同級生とは随分会っていなかったが、写真を眺めるうちに幾つも思い出が蘇ってくる。
そういえばこの頃、自分はどんな髪型だったっけ?
ふと気になって、自分の顔写真を探すものの、なかなか見当たらない。
あれ、どこだ?
2クラス分の顔写真をひとつひとつ確かめていくが、どこにも自分の名がない。
何だこれ?
もしかすると、アルバム写真を撮った日に欠席したか何かで、自分の分だけ収録されなかったのか?
そんな記憶もないが、もしそうだったとしても、委員会や部活動、あるいは修学旅行などのスナップ写真には写っているのではないか。
そう思ってそちらも探してみるものの、やはりOさんの姿はどこにもない。
つまり、卒業アルバムの中にOさんの写真が一枚も入っていないのである。
それだけ見れば、Oさんはその年の卒業生ではなかったという事になる。
しかし同級生の顔や名前には確かに覚えがあるし、一緒に卒業式に出た記憶もおぼろげではあるが残っている。
どうしても気になって、連休を利用して帰省した折に同級生の一人と連絡を取り、アルバムについて尋ねてみた。
すると、同級生の持つアルバムには確かにOさんの写真が入っているという。
つまり、Oさんの持つアルバムと同級生の持つアルバムは、Oさんの写真の有無という一点だけが異なっているということになる。


同時に発注したアルバムのはずなのに、なぜ内容が異なっているのか。
なぜOさんの持つアルバムにはOさん自身の写真が入っていないのか。
そういった疑問が新たに浮上したが、それらについては今でも全くわからないという。