Yさんが学生時代、一人暮らししていたときの話。
目を覚ますと、暗い部屋にテレビが煌々と点いている。
Yさん自身もベッドではなく床に突っ伏していた。
どうやら、テレビを見ながらうとうとしているうちに眠り込んでしまったらしい。
テーブルの上にあったリモコンを探って電源ボタンを押した。
しかし、何度やってもテレビは点いたまま。
リモコンの電池が切れたのかと思い、今度は本体の電源スイッチを押したが、やはり消えない。
故障か?
何度かスイッチを押してみるものの、どうにもテレビは点いたままである。
仕方がないので、電源プラグを引っこ抜いた。
消えない。
嘘!?何で!?
一気に目が覚めた。
何の番組なのか、画面には黒板のような枠が映っている。
「棒が一本あったとさ、葉っぱかな」
Yさんもよく知っている絵描き唄が流れた。それに合わせて、画面に白く線が表示される。
「6月6日に雨ざあざあ」
「あんぱんふたつ、豆みっつ」
「コッペパンふたつ、下さいな」
「あっという間にかわいいコックさん」
すぐに絵が完成した。
しかし、唄は止まらない。
「かわいいコックさん」
「かわいいコックさん」
「かわいいコックさん」
最後の一節だけを何度も繰り返している。
繰り返すうちに、コックさんの絵がだんだんアップになってくる。
画面いっぱいにコックさんの顔が大写しになったところで、プツッと音を立てて画面が消えた。
部屋が真っ暗になる。
数秒間ぼんやりしていたYさんだったが、そこでまた奇妙なことに気が付いた。
居眠りしていたのなら、何で部屋の灯りが消えてるんだろう?