私が小学生の頃、通学路の途中に古い倉庫が建っていた。
いつからあったのか知らないがその頃にはもうかなり荒れ果てていて、長い間ずっと使われていなかったであろうことが小学生の目からもよくわかった。
ある日の帰り道、私はその倉庫の前でおかしな物を見つけた。
鳥の翼である。
鳥の羽なら数枚、道端などに落ちているのを見たことがあるが、この時見つけたものはそれとは少し違っていた。色や大きさからして鳩のものと思われる片翼が、肩の所からもぎ取られた状態で、ぽとりと道端に落ちていたのである。断面には象牙色をした中空の骨が覗いていた。
猫にでもやられたかなと思ったが、周囲には他の羽毛や残骸は見当たらない。何かに捕食されたならば当然、羽毛などが散らばっているはずである。首を捻りつつ、興味を引かれた私はそれを拾って帰った。不衛生な物を拾ってくるなと母に叱られた。
それから少ししたある日の帰り道、私はまた同じ場所で同じようなものに出くわした。やはり片翼。他の残骸は見当たらない。この間の翼の持ち主と違う鳥である証拠に、前回と同じ側の翼だった。
前回母に嫌な顔をされたので、流石にその時は放っておいた。翌日同じ場所を見ると、それは無くなっていた。
また少し経ったある日の帰り道、また同じものを見つけた私は、あまり観察しないように足早にそこを通り過ぎた。やはり同じ側の翼だった。
――ということがあったのを最近思い出して、改めて不思議に思った。
そもそも私の通っていた小学校の近くは水田に囲まれたところで、鳩自体少ない。猫もいるしトンビもカラスもイタチもいるので鳩を捕食する存在には事欠かないだろうが、それにしてもあれほど連続して、同じ場所で、同じように、鳩の翼がもぎ取られていたのは一体何者の仕業だったのだろうか。いつも同じ側の翼だけ落ちていたのも不自然といえば不自然である。
その倉庫はその後取り壊されたようで、今はもうない。