深夜放送

Hさんという男性の話。
深夜、何やら眩しさに目を覚ましたHさんは、暗い部屋の中でテレビが点いていることに気が付いた。
テレビの前には奥さんらしき人影が座って、じっと画面を見つめている様子。画面は人影に遮られて見えない。
(こんな夜中に、一人で何観てるんだ? )
訝しく思ったHさんだったが、すぐまた寝なおそうと、首だけ反対側に向き直った。
すると、そちらにも奥さんの見慣れた顔がある。こちらは布団の中で穏やかに寝息を立てている。
驚いて反対側をもう一度見直したが、確かに奥さんらしきもう一人がそこには存在している。逆光なのでわかりづらいが、着ているパジャマの柄は確かに奥さんがいつも使っているものと同じだ。布団の中で自分の足をつねってみたものの、感覚は確かにあるので夢ではなさそうだった。
さっぱりわけがわからなくなったHさんはもう一往復左右を見比べると、部屋の明かりを点けてよく確かめてみよう、と考えた。それで起き上がろうと身動きした瞬間、テレビがぷつっと消えた。部屋が真っ暗になった。
一瞬ひるんだHさんだったが、飛び起きて明かりを点けてみると、奥さんは布団の中の一人だけだった。
ただ、訝りながらHさんが触ってみるとテレビはまだ暖かく、その前にはボタンの嵌まったパジャマがぱらりと落ちていたという。