Tさんは日本海に面した豪雪地帯の出身である。
朝、家の前の道を誰かが通ると夜の間に積もった雪を踏む「ぎゅっぎゅっ」という音がする。
それを聞きながら目が覚めるのは、幼いころからの冬の定番とも言える出来事だった。雪かきは大変なものの、Tさんは雪を踏む音を聞くと心が休まるという。
成人したTさんは東京で就職した。しかし、雪のあまり降らない東京でも、時々雪を踏む足音で目を覚ますという。当然、飛び起きて外を見てみても、本当に雪が降っていたことはほとんどない。
冬に限らず、夏にも同じことがあるらしい。