『てのひら怪談2 ビーケーワン怪談大賞傑作選』(加門七海/福澤徹三/東雅夫[編]、ポプラ社)

今夏開催された「第五回ビーケーワン怪談大賞」の応募作から百編を選んで一冊にまとめたもの。
八百字以内で書かれた掌編怪談集です。
巻頭の東雅夫先生による前書きにはこうあります。

(前略)本書の編纂にあたっては、怪談文学史上かつて例のない企てを実践することに致しました。
百人の書き手/語り手が、それぞれ取っておきの一話を代わるがわる披露する――すなわち百人の百話による百物語のヴァーチャルな試みです。
江戸初期の『諸国百物語』から現代の『新耳袋』に至るまで、百物語形式の怪談本は数多あれど、百人の語り手/書き手による純正百物語怪談集というものは、私の知るかぎり前例がない筈であります。

自分から進んで怪談を語りますという、明らかにマイナーな人種が百人も集まることができたのはひとえに、ビーケーワン怪談大賞が開催されたインターネットという場の力が大きいのではないでしょうか。
混沌たるネットの底なし沼から、怪談好きという魑魅魍魎が次々と這い出てくる様が目に浮かぶようです。百鬼夜行
「怪談之怪」が開催されたり、怪談専門誌『幽』が刊行されたり、近年何かと怪談熱の高まりを感じますが、本書からもその熱さはひしひしと感じられます。本書は現在の怪談界の動きのなかで特に先鋭的なひとつ、と申して過言ではありますまい。
全作感想をid:sinden氏がなさっているのでそちらも大いに参考にされたし。


何でいきなり本の紹介をしたかというと、私がこっそり応募していた作品も収録されているからなのでした。「帰り道にて」。ということで機会がありましたら手にとっていただけると嬉しいです。