六十/ ぬいぐるみ

宴会のため夜遅くなった帰り道、飲み物を買おうと道端の自動販売機の前で立ち止まり、どれにしようかと一通り見回して、Sさんはふと異物に気がついた。自販機の下部、取り出し口の蓋に猫のぬいぐるみが挟まっている。クレーンゲームの景品くらいの大きさだった。
おかしなことをする人もいたものだと思い、しゃがんでよく見ようとしたその時、取り出し口の奥から真っ白い手がにゅっと伸びてぬいぐるみの胴体を鷲掴み、そのまま自販機の中へずるっと引っ込んでしまった。パタンと取り出し口の蓋が閉まる。
Sさんは走って家に帰った。