伝言(43/100)

一週目

ほんとにねえ、あの娘が可哀想でねえ。
明日には町を出ていくんだとさ。
ジョニーの親のいやがらせのせいに決まってるんだよ。
身分が違うとか何とか言ってるけど、あの家だって只の成り上がり者に過ぎないんだ。
流れ者と息子を一緒にするわけにはいかんなんて、馬鹿な話もあったもんだよ。
そりゃああたしだってね、サニアがこの町にやってきた時は、とんだあばずれが来たもんだと思ったさ。
でもね、すぐにみんなわかったよ。
あの娘は気立てが良くって、誰にも優しくって、礼儀正しくって、とってもいい娘だった。
町のみんなはすぐにあの娘を気に入ったよ。
ジョニーみたいなボンボンにはまったく過ぎた娘だったんだよ。
まあ、馬鹿な男にいい娘が惚れることなんてよっくあることだけどね。
あんな親のいうことに従って町を出ていこうなんてね、素直すぎるんだあの娘は。
あたしゃ引き止めたんだ。
うちに置いてやるからってさ。
そしたらね、笑って「いいの」って言うんだ。
見てらんなかったよ。
今日中に町のみんなに挨拶して、明日の昼のバスで行っちまうんだと。
ジョニーの奴もね、本当にサニアのことを思ってるんなら、親のことなんて放っといて追いかければいいんだ。
まああのボンボンにそんな甲斐性はないだろうがね。
ほんとに、あの娘が可哀想だよ。

二週目

それがねえ、大変なんだよ。
サニアが首を吊ってたんだ。
あたしゃてっきりバスに乗って行っちまったとばかり、思ってたんだけどねえ。
そのバス停の、裏の木にぶら下がってたんだってさ。
あの辺もバスが来ないときは誰も通らないもんだから、見つかるのが遅くなっててねえ。
この陽気だろ。
可哀想なことをしたもんだよ。
思いつめてたんだろうねえ。
あたしゃ、それに気付いてやれなかったのがなんとも、心残りでねえ……。

五週目

ジョニーかい。
いなくなったよ。
まあお聞きよ。
サニアね。
あの娘はねえ、町を出る時にみんなに挨拶してった。
そのときにね、みんなに頼みごとをしたらしいんだ。
伝言だよ。
私が町を出て行ったら、ジョニーに伝えてくれって、そうみんなに頼んでいったらしいのさ。
内容?
さあねえ。
みんなに口止めしてったらしいからねえ。
でだ。
サニアがいなくなってから、と言うか見つかってからか、町のみんなは代わる代わるジョニーに会いに行った。
伝言を聞かせにさ。
ジョニーの方にしてみりゃ、毎日毎日、死んだ娘からの伝言が自分に届くんだ。
しかもその娘が死んだ理由が自分にあるときてる。
ジョニーはだんだん、おかしくなってってねえ。
とうとう先週の水曜の晩、何回目かの伝言を聞いたときに急にわめき出してね。
そのまま外に走り出して、とんと行方知れずさ。


ま、その最後の伝言を聞かせたのが、あたしだったんだけどね。
内容?
言えるわけないじゃないのさ、あの娘に口止めされたんだもの。




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ジョニーへ。
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