二十五/ エレベーター その二

Kさんはその日遅くまで残業をし、帰ろうと思ったときには既に十二時を過ぎていた。
オフィスに残っているのは既にKさんひとり。
非常口の灯りのみに照らされた通路でいつものようにエレベーターを待った。
上から降りてくる階数表示のランプを眺めていると、程無くドアが開いた。
しかし何か違和感がある。
タイミングがおかしい。
ドアが開くのが予想より早かった気がする。
気になって階数表示を見てみると、なぜか表示は二つ上の階で止まっている。
しかし目の前にはいつもの見慣れたエレベーターの個室。
これはどちらがおかしいのだろうか。
――疲れてるのかな。
そう思ったKさんが立ち尽くしていると、数秒してドアが自動で閉まった。
再び階数表示が下がる。
ドアが開く。
エレベーターがある。
表示は一階上で止まっている。
――またか。
またドアが閉まる。
表示が下がる。
ドアが開く。
今度こそ表示はKさんのいる階だった。
Kさんはやっとエレベーターに乗り、無事一階について帰宅した。