十七/ 古いトンネル

Fさんが学生の時の話。
ある日、暇に任せて友達と夜中に旧○○トンネルに行ってみようということになった。
旧○○トンネルというのは近辺では心霊スポットとしてよく知られていた。
しかし当日になって、Fさんだけが急用で行けなくなってしまった。
しばしの後、トンネルへ行った友人達からFさんに電話がかかってきた。
出てみるとトンネルの前からかけてきているというので様子を聞いてみた。
「いやー、暗いけど別に変わったことはないなあ。とりあえずこれからトンネルを抜けてみるけど」
というその後ろでは、どうも何人かで盛り上がっているようで、時々女の子のものらしき嬌声も交じる。
――なんだ、俺の代わりに誰か女の子を誘ったのか。うまいことやってるな。
そう思ったFさんは聞いてみた。
「何人で行ってんの?女の子もいるみたいだけど」
「は?男だけだけど?」
「何言ってんだよ、さっきから女の子と盛り上がってんのが聞こえてるよ」
「……俺のほかには今誰もしゃべってない」
Fさんには依然としてざわつく声が聞こえる。友人の声が時折聞こえにくくなるほどだ。
背筋がぞっとした。
「……今すぐ戻って来い。トンネルには入るな」
「……そうする」


翌日その友人達に会ったが、一様に青い顔をした彼らは電話を切った後のことについては何も教えてくれなかった。
Fさんは後になってから、あの時電話を録音しておけばよかったかなと思ったという。