うたかた

浮かんでは消えてゆく泡は、一体どこへ消えてゆくのだろうか。


地の果てには海があり、海の果ては滝となって絶え間なく落ちている。
水が落ちた先には泡が立つ。
海が落ちた先であるから、その泡の量たるやすさまじいものだ。
あまりに泡の量が多いので、泡のかたまりの中心では大きな一つの泡ができている。
その大きさたるや、この世で一番高い山が百は入ってしまうほどだ。
その中はこれまた不思議な「泡の世界」と呼ばれるものになっている。
この世のすべての泡は消えるとこの泡の世界に行くのだ。
この世で泡が一つ消えるたび、泡の世界に小さな泡が一つ増える。
泡の世界で小さな泡が一つ消えるたび、この世に泡が一つ現れる。

あるとき泡の世界の泡の中から、美と愛の女神アフロディーテが生まれた。
アフロディーテは泡の中から生まれたので、生まれてすぐの頃は頭に泡がまとわり付いていた。
今日、泡立ったような髪型のことを「アフロへアー」と呼ぶのはそこに由来する。