十三/ 公園の鳥

その日、Hさんは偶々公園のベンチに座って昼食をとっていた。
前日の俄か雨で公園には点々と小さい水溜りができていた。
コンビニで買ったパンと缶コーヒーを流し込みながら、ぼんやり目の前にある水溜りを眺めていると、不意にそこに波紋が起こった。
風もないのにおかしいな。
そう思うと、またすぐに波紋ができた。
どうも風に吹かれた波ではないように見える。
何かが水に落ちたような水の跳ね方である。
しかし何かが落ちてきたわけでもない。
上を見たが落ちてくるようなものもない。
首を傾げながら視線を戻すと、思わず目を見張った。
水溜りの端にもう一つ波紋が起きたかと思った次の瞬間、水溜りの外のアスファルトに鳥の足跡がぺたぺたと現れたのだ。
そこにいるはずの鳥の姿は影も形も見えないのにも関わらずである。
Hさんが呆然と見ている前で、足跡は二、三歩進んでそれ以上増えなくなった。
数分して我に返ってから、多分あれは飛んでいったんだな、と思い至った。
「公園にいる鳥だし、足の大きさからすると鳩だったんじゃないかな」とHさんは言う。